神戸就業規則サポートセンターが、あなたの会社の人事労務に役立つ情報をお伝えします。
[topic color="blue" title="中小企業経営者のご相談"]
当社は介護事業を運営しています。
1カ月毎にシフト表を組んでいますが、シフトが決まってから、有給休暇を請求されると、
その都度、組直さなければならず、とても困っています。
「シフト表を組む前に請求すること」や「1カ月以上前には請求するように」
といったルールを設けることはできますか?
また、一年の中でも12月は、クリスマス会や忘年会、
正月の準備や大掃除などもあり、忙しい月です。
12月の有給休暇は避けてもらいたいと考えています。
そのようなルールを設けることもできますか?
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[topic color="red" title="神戸就業規則サポートセンターの回答"]
法律上、
「1カ月以上前に請求すること」を就業規則に規定したり、
繁忙期の有給取得を禁止する規程を設けることはできません。
しかし、職場の円滑な運営のために、
余裕を持って有給休暇を請求することを
「お願い」することは問題ないと考えます
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有給休暇の「時期指定権」と「時期変更権」
社員が「この日に有給休暇を使わせてください」と請求があった場合、
原則として、その日に有給休暇を付与しなければいけません。
これを「時期指定権」と言います。
ただし、「事業の正常な運営を妨げになる場合」には、
「その日は、あなたが休むと、困るから別の日にしてほしい」
ということができます。
これを「時期変更権」と言います。
間違ってはいけないことは、
会社には、有給休暇の取得を許可する・許可しない
を決める権利はないということです。
社員が指定した日に有給休暇を取得すると、
会社の事業の正常な運営が妨げる場合に限って、
「他の日にしてくれませんか」
とお願いすることが出来るだけの権利なのです。
「事業の正常な運営を妨げる」とは
「事業の正常な運営を妨げる」場合に限って、
会社は「時期指定権」を使うことができます。
しかし、「事業の正常な運営を妨げる」ことが誰からみても明らかな場合とは、稀なケースです。
「人手不足で、休まれると忙しくなるので困る」程度の理由では
「事業の正常な運営を妨げる」には該当しません。
「人をやりくりしても、どうしてもその人がいないことで、業務をストップせざるを得ない」
というようなレベルとお考え下さい。
もちろん、ただ有給休暇を使わせたくない理由で時季変更権を使用することは、
権利濫用で認められません。
有給休暇はいつまでに請求すればいい?
法律上、有給休暇は「事前に」請求すればよいことになっています。
では、「事前」とはいつまでなのか?という疑問があります。
これに関しては特に決まりはありません。
解釈上は「時季変更権が行使できる前日の終業時刻まで」
つまり、有給休暇を取得しようとする前日までとされています。
過去の判例には、業種や規模によって業務に支障がでる場合は、
制限が可能であるというものもあります。
判例を見てみましょう。
【大阪地裁平成12.9.1事件】
10人規模の運送業で、「3日前までに請求しなければならない」の制限は法に反しない
【最高裁1小昭57.3.18事件】
前々日までに請求しなければならない規定は有効である
明らかに有給休暇の取得をしにくくするような程度の厳しい制限は認められませんが
合理的な範囲での制限は可能、ということです。
「1カ月前までに請求しなければならない」
というルールを設けることは有給休暇取得を大きく制限してしまう恐れがあるため
認められないでしょう。
職場を円滑にする有給休暇の運用ルール
ここまでは、法律的な観点からご説明してきました。
しかし、個人的な意見として、
職場でお互いが気持ちよく有給休暇を取得するためには、
法律論だけでなく、良識的な考えで運用していくべきと考えます。
普段から、有給休暇の取得を不当に制限している会社でなければ、
以下のようなルールを設けることは妥当性があると考えます。
「翌月のシフト表を作成する前々日までに有給休暇取得日を申し出てください」
「有給休暇を取得する、1週間前までに申し出てください」
「12月は繁忙期ですので、やむを得ない場合を除き、有給休暇の取得は控えてください」
とお願いすることは、問題ないでしょう。
これが、職場を円滑に運営していくためのツボではないでしょうか。
年次有給休暇に関する就業規則の規定例
社会保険労務士が監修した
[keikou]年次有給休暇に関する就業規則の規定例[/keikou]
をワードファイルでご提供しています。
御社の実情に合わせ、修正して活用することができます。
就業規則専門、神戸就業規則サポートセンター代表 社会保険労務士の清水がお伝えしました。
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