就業規則の作成・働き方改革支援コンサルティングを専門とする社会保険労務士 清水良訓が
新入社員・中途採用社員を採用する際の「試用期間」について、
中小企業経営者様に役立つ情報をお伝えしています。
この記事の対象者
・試用期間中は簡単に辞めさせることができると思っている
・試用期間中に適性や能力を十分見極めてから、本採用するかどうかを決めたい
・不適格と判断した社員を試用期間終了後、辞めさせる方法を知りたい
試用期間中に、
「採用時に思っていたほどの人材ではなかったので、辞めてもらいたい…」
「勤務態度が悪く、このままうちの会社にいてもらいたくない…」
そうお考えになったことがある、経営者は多いのではないでしょうか。
試用期間とは、その言葉通り「お試し期間」だから、
もしも、試用期間中にうちの会社に適さないとわかったら本採用しなければいい、
なんて考えていませんか?
残念ながら、試用期間中または使用期間終了後でも、
社員をやめさせることは簡単ではありません。
試用期間中も条件付きですが、労働契約は成立しています。
社員から、「試用期間中の解雇は無効だ!」と拒否されたら、
会社は解雇の有効性を証明しなければなりません。
具体的には、業務への適性がないことの根拠を示すことができなければ解雇はできないのです。
このブログでは、
試用期間とは?
試用期間中や試用期間終了後の解雇トラブルを未然に防ぐための方法
などについて、順に解説してゆきます。
最後に専用の資料もお配りしていますので、
ぜひお役立てください。
試用期間はお試し期間だから、自由に解雇できると思っていませんか?
試用期間とは?
試用期間は適性を判断するための期間
試用期間は、採用した社員が、業務への適性、能力などをもっているかどうかを判断するための期間です。
適正や能力だけでなく、周囲の人たちとうまくコミュニケーションをとって、
円滑に仕事を進めることができるかどうかも、重要な判断ポイントです。
いくら能力が高くても、周りの人たちに悪影響を及ぼすと、
職場のモチベーションが低下しますよね。
面接や履歴書では、あなたの会社に本当に適性があるかどうかを判断することは簡単ではありません、。。
私も、採用支援をさせていただくときに、面接に同席させてもらうこともありますが、
完全に見極めることは本当に難しいと感じています。
だから、試用期間という期間を設けて、一定期間、実際に働いてもらってから判断するのです。
試用期間中に、勤務態度、性格、健康状態、能力、適性などを見極め、本採用するかどうかを決めます。
試用期間の適正な長さは
試用期間の長さについては、法律的な決まりはありません。
ただし、試用期間を設ける場合には、就業規則にその期間を予め定めておかなければいけません。
長ければ長いほど、適性を見極めることができるようになるので、会社としては長いに越したことはありませんね。
試用期間中は簡単には解雇されないとは言っても、やはり、社員にとっては、不安定な身分です。
あまりにも長く続くことは酷といえるでしょう。
私が、関与させていただいた会社の多くは3カ月とすることがもっと多く、短い会社では1カ月、しっかり見極めたいから6カ月と設定されている会社もあります。
しかし、最初設定していた試用期間ではどうしても、適性が見極められないような場合もありますよね。
そんな時は、試用期間を延長することをご提案しています。
試用期間の延長について就業規則に記載がない会社は、試用期間の延長はできませんので、就業規則に記載しておいてください。
試用期間を延長する際には、期間満了日までに十分な時間をあけて本人に通知する(少なくとも30日以上前)とともに、
延長する具体的な理由についても説明し、納得してもらうようにしましょう。
試用期間があまりにも長い場合は「公序良俗に反し無効」とされた判例もあるため、長くても1年以内に止めておくのが無難です。
試用期間中でも解雇は簡単ではない
試用期間中に社員に適性がないと判断すれば、試用期間中または使用期間満了時に社員の本採用を取消し、解雇をすることができます。
ただし、労働契約は成立していますので、契約を解消するには、
「客観的・合理的で社会通念上当然であると認められる理由」が必要になります。
判例によると、以下のような事由が本採用拒否の要素と判断されています。
・出勤率不良で遅刻、欠勤を繰り返す場合
・勤務態度は極めて悪く、注意を受けても改善されない場合
・担当職務の変更や配置転換を行っても改善がなく能力不足の場合
・重大な経歴詐称や虚偽の事実がある場合
これらの要素をクリアすることができなければ、解雇をすることはできないのです。
就業規則に本採用を行わない事由を記載しておく
試用期間中や試用期間満了後、の解雇については過去に争われた事例では、以下の点が争点となっています。
・就業規則に試用期間の本採用取り消し事由が記載してあるかどうか
・従業員に適性があるかないかを客観的に判断できるデータがあるかどうか
・会社が適正のないことを本人に伝えて指導をしていたかどうか
トラブル防止のためには、就業規則に試用期間中の解雇事由を記載しておくことは必須です。
社員には、どういう場合に本採用を取り消すのかを、入社前や試用期間中に説明しておきます。
試用期間中に従業員の適性に問題があった場合、そのことを従業員に伝えて指導した記録も残しておきましょう。
試用期間中を通して、「本採用基準評価シート」を活用することをお勧めしています。
従業員の適性を客観的に判断するための資料となります。
「本採用基準評価シート」については、こちらからダウンロードができるようになっています。
あなたの会社に合わせて、是非ご活用ください。
契約社員として採用する
試用期間満了後に解雇するというリスクを避けるためには、「契約社員」として採用するという方法もあります。
契約社員としての採用であれば、契約期間を満了する際、会社側は以下の三つのどれかを選択することができます。
(1)正社員として採用する
(2)契約社員として再度更新する
(3)契約期間満了で契約を終了する
契約期間中に、適性に問題がないことを確認できれば、面接や正社員登用試験を実施し、(1)合格者は正社員として採用します。
契約期間中では、適性が見極めきれない場合は、(2)もう一度契約社員として、有期契約を更新します。
適正や能力に満たないと判断すれば(3)契約期間満了で契約を終了します。
契約期間中も試用期間中と同じように、 本採用基準評価シート を記録しておきます。
(「本採用基準評価シート」については、こちらからダウンロードができるようになっています。)
本採用の基準を明らかにしておくことで、契約社員に基準が明らかになりトラブルが減ります。
契約社員として採用する場合があることは、求人票や求人広告に記載しておきましょう
労働条件通知書、または、雇用契約書の契約期間満了後の取り扱いについては、「更新する場合がある」としておきましょう。
自動更新にすると、実質的に正社員として採用しているとみなされる恐れがあるからです。
まとめ
・試用期間中、試用期間満了後に解雇するためには、
「出勤率不良で遅刻、欠勤を繰り返す場合」
「勤務態度は極めて悪く、注意を受けても改善されない場合」
「担当職務の変更や配置転換を行っても改善がなく能力不足の場合」
「重大な経歴詐称や虚偽の事実がある場合」
以上の要素を満たさなければ、解雇は難しいでしょう。
・試用期間は延長する可能性があることを、就業規則に記載しておきましょう。
・試用期間後、本採用を行わない事由を就業規則に記載しておきましょう。
・リスクを避けるために、契約社員として採用することも一つの方法です。
本採用基準評価シートの書式例
社会保険労務士が監修した
本採用基準評価シートの書式例
をワードファイルでご提供しています。
御社の実情に合わせ、修正して活用することができます。
就業規則専門、神戸就業規則サポートセンター代表 社会保険労務士の清水がお伝えしました。
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