就業規則の作成・人事・賃金制度の整備を専門とする社会保険労務士 清水良訓が
賃金規程の記載事項と失敗しない書き方9つのポイントについて
中小企業経営者様に役立つ情報をお伝えしています。
この記事の対象者
・賃金規程に必要な記載事項を知りたい
・従業員と賃金でのトラブルを避けたい
・法律に違反しない賃金規程を作成したい
・初めて賃金規程を作成しようと考えている
就業規則の内容の中で、賃金に関する記載事項は毎月の給与計算に大きく関わります。
間違った方法で給与計算を行うと、会社と従業員の間で大きなトラブルに発展する可能性があります。
それだけに、就業規則の中でも賃金に関する記載事項はとても重要です。
だから、就業規則とは別に、賃金規程または給与規定として作成している会社も多いです。
賃金規程には法律で決められた記載事項があるので、作成の際には注意が必要です。
この記事では
賃金規程に記載するべき事項と記載事項を作成する際に抑えておきたい9つのポイントを分かり易くご紹介します。
賃金規程の記載事項のサンプルもダウンロード可能ですので、是非ご活用ください。
賃金規程の記載事項は3種類
労働基準法では、必ず就業規則に盛り込まなければならない絶対的記載事項と、制度があれば記載しなければならない相対的記載事項が決められています。
大きく分けると、絶対的記載事項には主に賃金に関することが含まれ、相対的記載事項には退職金や賞与に関する事項が含まれます。
①必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)
・賃金の決定および計算方法
・賃金の支払方法
・賃金の締切りおよび支払い時期
・昇給に関する事項
②定めをする場合には記載しなければならない事項(相対的記載事項)
・退職手当に関する事項
・賞与に関する事項
・その他の手当に関する事項
・最低賃金額に関する事項
・従業員に負担させる食費などに関する事項
③記載してもしなくてもかまわない事項(任意的記載事項)
・定年制に関する事項
・旅費に関する規程
・改正の手続
・施工期日
賃金規定の記載事項の書き方9つのポイント
賃金規程に必要な記載事項を実際に作成していくうえで是非とも抑えておきたい9つのポイントがあります。
ポイント
ポイント①賃金の構成に関する記載事項
ポイント②基本給に関する記載事項
ポイント③手当に関する記載事項
ポイント④割増賃金に関する記載事項
ポイント⑤有給休暇に関する記載事項
ポイント⑥欠勤などの扱いに関する記載事項
ポイント⑦「賃金の支払」や控除に関する記載事項
ポイント⑧昇給・降給に関する記載事項
ポイント⑨賞与に関する記載事項
ポイント①賃金の構成に関する記載事項
賃金の構成とは、給与が何で構成されているのかを示すものです。
賃金の項目を一つ一つ列挙していったり、図で示したりしてもかまいません。
分かり易くなっており、従業員がどんな名目で給料が支払われているのが把握できることが重要です。
ポイント②基本給に関する記載事項
基本給は、賞与や退職金の計算の基準としている会社も多く、とても重要なものです。
職務内容や能力など「職務に関する要素」や勤続年数、年齢、職務態度、学歴などの「個人に関する要素」などから総合的に評価するため、人によって異なることが一般的です。
ポイント③手当に関する記載事項
手当には、「通勤手当」「食事手当」「住宅手当」「資格手当」などがあります。
「役職手当」のように、従業員のモチベーションアップを意図して、有効活用する会社も多いです。
ポイント④割増賃金に関する記載事項
従業員を法定労働時間(1日8時間)を超えて時間外労働させた場合や、深夜(午後10時~午前5時)、法定休日に働かせた場合、一定の割増率で計算した割増賃金を上乗せして支給します。
「どういった場合に割増賃金が支払われるのか」「割増率はいくらか」といった点を分かり易くまとめて記載します。
ポイント ⑤有給休暇に関する記載事項
有給休暇取得時の賃金の支払い方には3つあります。
つまり、何を元に賃金を計算するのかです。
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる賃金
③標準報酬月額の1/30。
これらのうち、どれを選択するかを賃金規程に明記します。
一般的には、多くの会社が②の方法を採用しています。
日給者はその日の金額、月給者はその日は出勤したものとして、月給額をそのまま支払います。
時給者は、その日に働くはずだった時間分の賃金を支払います。
ポイント⑥欠勤などの扱いに関する記載事項
従業員が欠勤、遅刻、早退した場合は、その分の賃金を減らすことができます。
この場合の減額の計算式などを賃金規程に記載します。
一般的には、年平均の月所定労働日数を基準に欠勤控除をします。
諸手当のカットについては法律上、特に決まりはありません。
会社がルールを定めて、カットする場合は、賃金規程に明記します。
ポイント ⑦「賃金の支払」や控除に関する記載事項
賃金の支払い方には法律で定められた5つのルールがあります。
①現金で②従業員に直接③全額を④毎月一回以上⑤毎月一定の日に、支払わなければなりません。
ただし、授業員の同意があれば、指定の銀行口座に振り込むことができます。
また、社会保険料や税金などはあらかじめ控除して支払うことができます。
控除するものを賃金規程に記載しておきます。
ポイント⑧昇給・降給に関する記載事項
賃金の昇給については、就業規則または賃金規程に必ず記載しなくてはなりません。
昇給の時期、昇給の条件等を定めます。
気を付けなければならないことは、「毎年〇月に昇給を行う」と定めると、必ず昇給させなければなりません。
そのため、「従業員の勤務成績や能力などを考慮して決定する」や「勤務成績がDの場合は降給する」など、昇給しない場合や降給する可能性もあることを記載しておきましょう。
ポイント⑨賞与に関する記載事項
賞与は必ず支給しなくてはならないものではありません。
ただし、就業規則や賃金規程に「賞与を支給する」と記載した場合は、支給する必要があります。
支給対象期間、算定基準、支給日などは明記しておきましょう。
「会社の業績および従業員の勤務成績や能力に応じて決める」のように記載すると良いでしょう。
まとめ
賃金や給与に関するルールは、就業規則や賃金規程に記載する必要があります。
特に絶対的必要記載事項については、もれのないように記載するようにしましょう。
賃金規程の作成は、従業員とのトラブルを避けるためにも必要なものです。
従業員に気持ちよく働いてもらうためにも、今回ご紹介した9つのポイントを抑えて、整備していくようにしましょう。
賃金規程の記載事項 記載例
社会保険労務士が監修した
賃金規程の記載事項 記載例
をワードファイルでご提供しています。
御社の実情に合わせ、修正して活用することができます。
就業規則専門、神戸就業規則サポートセンター代表 社会保険労務士の清水がお伝えしました。
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