採用

雇用契約を口約束で済ませていませんか?トラブル防止のためには雇用契約書の作成をお勧めします

 

就業規則の作成・働き方改革支援コンサルティングを専門とする社会保険労務士 清水良訓が

新入社員・中途採用社員を採用する際に必ず必要となる「雇用契約書」について、

中小企業経営者様に役立つ情報をお伝えしています。

 

この記事の対象者

・口頭だけで雇用条件を伝えている!

・採用後、従業員から「こんな条件とは聞いていなかった」と言われた

・「労働条件通知書」「雇用契約書」どちらがいいの?

・求人広告の内容と、実際の雇用条件と違っていても大丈夫?

・雇用契約書には、何を書けばいいの?

 

人同士の間で

「言った」

「いや、そんなことは言っていない」

のトラブルはつきものですよね。

 

書面や録音での記録などがなく、お互いの記憶上にしかない場合は、どちらが真実を言っているのかはわかりません。

誰しもが経験したことではないでしょうか。

 

実は、会社でも同じようなことが起きていることがあります。

それは、採用の際の雇用契約を交わす時なのです。

 

あなたの会社では、

「給与や勤務時間は面接のときに話したとおりです。今日から頑張って働いてくださいね。」

といった様に、口頭だけで雇用契約の内容を伝えていませんか?

 

後々、

「そんな勤務条件は聞いていません」

「いや、面接のとき言った」

のトラブルになりかねません。

 

そこで、この記事では、

口約束だけで、雇用契約を済ませてしまうことのリスク、

また、リスクを減らすために、会社が行うべき具体的な方法について、わかりやすく順を追って解説してゆきます。

 

最後に、あなたの会社の現状に合わせて、すぐに使える、雇用契約書の書式も無料でダウンロードできるようになっていますので、是非お役立てください。

 

雇用契約を口約束で済ませていませんか?トラブル防止のためには雇用契約書の作成をお勧めします

 

雇用条件は書面で明示しなければいけません

雇用契約は口約束だけでも成立します。

しかし、口約束は「言った」「言わない」のトラブルに繋がる可能性があります。

 

例えば、

・残業代は基本給にプラスして支払ってもらえるのか、それとも、固定残業代として、基本給のなかに含まれているのか?

・雇用契約期間の定めがあるのか、ないのか?

・賞与はもらえるのか、貰えないのか?

・昇給はあるのか?あるとすればいつ昇給してもらえるのか?

・休日出勤しなければならないことがあるのかどうか?

 

会社と従業員の間で起こる、最も、多いトラブルが、給与額や休日など雇用条件に関するものなのです。

 

人間は自分の都合の良いことは覚えていて、都合の悪いことは忘れてしまうのですよね。

 

そこで、労働基準法では、必ず明示しなければならない事項が決まっています。

①雇用契約の期間

②働く場所、従事する仕事

③始業及び終業時間、時間外及び休日労働の有無、休憩、休日、休暇、交代制度等に関する事項

④賃金(退職金・賞与等を除く)の決定、計算、支払いの方法、賃金の〆切・支払いの時期、昇給に関する事項

⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)

⑥退職手当の適用の有無、計算 支払いに関する事項

⑦臨時の賃金 賞与その他の手当 最低賃金に関する事項

⑧労働者に負担させるべき 食費 作業用品作業服等の負担の有無に関する事項

⑨安全衛生に関する事項

⑩教育研修 職業訓練に関する事項

⑪災害補償 私傷病扶助に関する事項

⑫表彰制裁に関する事項

⑬休職に関する事項

 

特に気を付けておかなければいけないことは、上記の①から⑤(昇給に関する事項は除く)については、

従業員への書面での交付が労働基準法で義務付けられているということです。

すなわち、口約束だけで雇用条件を伝えることは違法なことなのです。

 

労働条件通知書と雇用契約書、どちらがいいの?

 

雇用契約を行う際には雇用条件を書面で交付することが、労働基準法で義務づけられてることをご説明しました。

 

それは、「労働条件通知書」または、「雇用契約書」で交付する方法です。

 

では、「労働条件通知書」と「雇用契約書」の何か違うのでしょうか。

 

 

「労働条件通知書」とは?

「労働条件通知書」とは、雇用契約を結ぶ際に、会社から従業員に対し、

「あなたの雇用条件はこのようになっていますよ」と一方的に通知する書面です。

 

「雇用契約書」とは?

従業員を雇用する時に会社と従業員の間で交わす契約書です。

2部作成し、会社側と従業員とがお互い署名・押印したあと、両方がそれぞれ保管します。

 

「労働条件通知書」と「雇用契約書」どちらがいいの?

法律では、「労働条件通知書」を交付するだけでよいとなっています。

しかし、労働条件通知書は、会社が一方的に通知する書面です。

従業員から、「そんな通知はもらっていません」と言われれば、まさに、「言った」「言わない」の水掛け論になってしまいます。

一方、雇用契約書は、契約内容を会社側と従業員とがお互いに確認したうえで、2部に署名・捺印します。

各1部づつをお互いが保管するので、「言った」「言わない」のトラブルがなくなります。

神戸就業規則サポートセンターが雇用契約の支援をさせていただく場合は、雇用契約書を締結していただくことをお勧めしています。

 

求人票の雇用条件と違う場合はどうするの?

 

会社が社員を募集する際には、求人雑誌に求人広告を出したり、ハローワークに求人票を提出したりします。

最近ではインターネットやスマホのWebサイトで募集するケースも急激に増えています。

 

求人広告には求職者が応募するかどうかを検討する材料とするために、給与額、勤務時間、休日などの雇用条件が示されています。

 

こうした、募集行為は法律的には「労働契約申込みの誘因」といいます。

一方、求人広告などを見て、求職者が応募する行為を「契約の申し込み」といいます。

 

休職者から「契約の申し込み」を受けた会社が、採用面接などの段階を経て採用を決定した時点で初めて雇用契約が成立します。

つまり、求職者が応募してきた時点では、雇用契約が結ばれたわけではないのです。

ということは、求人広告に記載した雇用条件は、必ずしも、確定した雇用条件ではないということです。

 

実際の判例では、採用面接で求人広告の内容と異なることを求職者が承知していれば、広告の条件と面接で合意した条件が異なることには問題がないとされています。

求人広告に記載された賃金の額などの雇用条件はあくまでも見込みなのです。

会社としては必ずしも広告に示した条件で雇入れる必要はありません。

 

ただし、応募者を多く集めるために、賃金などの雇用条件を実際よりもわざと高く見せたり、実際とは違う仕事内容を求人広告に掲載するなど、嘘の表記をして、求人することはしてはいけません。

 

判例でも、「会社は求人票に記載の見込み額を大きく下回る額で賃金を確定すべきではない」としています。

雇用契約時に全く見当違いの賃金で契約することは問題とされてしまいます。

 

賃金を求人広告よりも下げるのであれば、面接時や雇用契約時に説明をし、合意を得る必要があります。

また、書面にしてその旨を明示した方が確実でしょう。

 

トラブルになる前に

 

誰しも求人広告の賃金額よりも、実際にもらえる額が高い方になれば喜びますが、逆に、低い額になってしまうとすぐには納得できないでしょう。

渋々、その条件を受け入れたとしても、後々仕事へのモチベーションに影響してくるかもしれません。

 

賃金額は、誰もが最も気にする条件です。

そのぶん、トラブルの原因になる可能性も高いと考えられます

 

最初から金額を限定するのではなく、○○万円から○○万円と表記したり、試用期間は○○万円と表記するなど、募集の時点から賃金には、ある程度の幅を持たせることでトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

 

求人広告などに記載した雇用条件よりも低い条件で契約を結ぶことになる場合は、なるべく早い段階で求職者にその事情を説明し理解を求めることが必要です。

そして、最終的には、できるだけ、求人広告と同じ条件に近づけることが望ましいでしょう。

また応募者から給料の額、休暇の定めなど、賞与の有無、残業時間数を尋ねられるでしょうから、採用前から回答できるようにしましょう

 

ちなみに、求人を行う際、ハローワークを利用すれば、求人票の掲載期間は3ヶ月で費用もかかりません、書き方次第では、あなたの会社の魅力を十分にアピールすることができます。

ハローワークの求人なんて、いい人が集まらないのでは、と思われている経営者も多くおられます。

私が、ハローワークを通して採用のご支援をさせていただいた会社の多くは、ハローワークから、自社が希望する人材を採用することができていいます。

ハローワークを活用することを、ぜひおすすめします。

 

今から雇用契約書を作成しても間に合いますか?

 

雇用契約書は必ず入社時に締結します。

しかし、これまで雇用契約書を作成していなかったり、忙しくて作成することを忘れていたという場合もあると思います。

ご安心ください、今から作成しても大丈夫です。

 

例えば、入社日が4月1日で、作成しようと思ったのが10月1日の場合。

雇用契約書の日付欄に、作成しようとしたときの日付、つまり、10月1日と記入して、

「契約書の効力発生日は〇年4月1日とする。労使双方で確認しました」と一文を記入しておきます。

この一文を入れていることで、実際の入社日から、雇用契約書作成日までの期間の契約を成立させることができます。

 

雇用契約書の条件と実際が違っている場合は?

 

雇用契約書には基本給25万円と記載されているのに、実際には23万円しか支給していなかったという場合、従業員は即時に雇用契約を解除することができるのです。

 

「契約書の内容と、実際もらっている給与額が違うので、辞めさせてもらいます。」

というように、従業員が訴えてきたら、会社としては受けいれざるを得ないのです。

 

さらに、この従業員が、就職するために、転居してきたいたならば、雇用契約を解除の日から14日以内に帰郷する場合には、会社は、必要となる旅費を支払はなければいけません。

旅費には家族の分も含みます。

雇用契約書は常に見直し、実際の、雇用条件と違いがないかを確認することをお勧めします。

 

未成年者との雇用契約は有効?

アルバイトを採用する場合にも、雇用契約書を締結することは必要です。

では、未成年者との雇用契約を結ぶことはできるのでしょうか。

結論からいうと、未成年者であっても雇用契約は直接本人と締結しなければなりません。

本人以外の者と雇用契約を締結しても無効となります。

 

一方、雇用契約が未成年者本人にとって不利であると認められる場合、親権者や後見人等はその契約を将来に向かって解除することができます。

せっかく採用しても、「両親が反対してやめることになったということがないように」雇用契約時に保護者の同意を求めることをしても差し支えありません。

 

 

 

 

まとめ

 

・雇用契約は必ず、書面でおこないましょう。

・雇用契約書に必ず書面で締結しなければならない事項は

①雇用契約の期間

②働く場所、従事する仕事

③始業及び終業時間、時間外及び休日労働の有無、休憩、休日、休暇、交代制度等に関する事項

④賃金(退職金・賞与等を除く)の決定、計算、支払いの方法、賃金の〆切・支払いの時期、昇給に関する事項

⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)

・「労働条件通知書」と「雇用契約書」、当センターは「雇用契約書」の締結をお勧めしています。

・求人票の雇用条件と実際の条件とが違うことは問題ありません。しかし、違うことになった理由を従業員には十分に説明し、理解してもらいましょう。

・これまで、雇用契約書を作成していなかったり、作成を忘れていなかった場合、今すぐ、作成すれば大丈夫です。

 

雇用契約書の書式例

社会保険労務士が監修した

雇用契約書の書式例

をワードファイルでご提供しています。

御社の実情に合わせ、修正して活用することができます。

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