トラブルを回避するための制度設計と運用
固定残業性は自己流で行うとトラブルの原因になります
固定残業制度は、残業代の支払いに頭を悩ませている会社にとっては、大変有用な制度です。
しかし、賃金という社員の生活にダイレクトに関係しているだけに、制度設計や運用には厳しい条件が決められています。
実際に、固定残業制を自己流で導入したために、後々、労使間でのトラブルになり、裁判で違法と判断され、かえって会社が多くの損害を被ったという例は少なくありません。
固定残業性を導入するにあたっては慎重に検討し、最低限4つの制度・運用のハードルを越える必要があります。
ハードル1 雇用契約書・就業規則に記載する。
まず形式が整っていることが重要です。
就業規則または給与規定に残業代を定額で支給することを明記しておきます。
固定残業制導入の際に、基本給が減額されるの従業員にとって不利益な変更が伴う場合には、従業員からの同意が必要になります。
この際に、気を付けなければいけないことは、同意は必ず書面で取り付け、署名捺印をしてもらうことです。
固定残業制について盛り込んだ雇用契約書も改めて交わしましょう。
就業規則や給与規定に規定されていなかったり、社員に口頭のみで確認を済ませ、同意書をとらなかったという場合は、そもそも固定残業制度を導入したと認められないこともあるので注意が必要です。
ハードル2 固定残業代に当たる賃金とそうでない賃金と区分する。
固定残業代に当たる賃金は残業代(時間外労働、深夜働、休日労働に支給する賃金)に関係したものであり、通常の労働時間に対して支給する賃金とは明確に区分されていなければなりません。
一番わかりやすいのは、固定残業代・定額時間外手当・定額深夜手当・定額休日手当の様に名前だけで固定残業代と分かる手当を設けることです。
手当の額と、相当する残業時間数も雇用契約書に明記します。
他の手当、例えば営業手当や役職手当に組み入れるときも、その手当のどれくらいの部分が固定残業代なのか、つまり、残業代にあたる部分の額と相当する時間数を雇用契約書にも明記することが必要です。「営業手当には一部時間外手当が含まれる」などという曖昧な記載では固定残業代として認められません。
手当の性質が変わるのですから就業規則にも手当の説明を変更することを忘れないでください。
ただ、労働時間との関係性が薄い手当に固定残業代を組み入れることはできません。
成績や出来高などに応じて支給される。歩合給などがそれにあたるので注意してください。
ハードル3 従業員の労働時間管理を行い、実際の残業時間を把握する
定額残業性を取り入れたからといって、残業時間の管理を行わなくていいということではありません。
労働時間の管理は通常どおり行い、残業時間も時間外労働・深夜労働・休日労働を区別して実際がそれぞれ何時間を行なったかを把握しておきます。
固定残業代制度を導入したからといって、無制限に残業を命じることはできません。健康管理の観点からも、従業員の労働時間は適切に管理することが必要です。
ハードル4 実際の残業代が固定残業代の学校を上回る場合は、その差額を支払う旨を規定する。
従業員が実際に行った時間外労働・深夜労働・休日労働のそれぞれに対して支払うべき割増賃金を計算し、その金額がそれぞれの固定残業代を上回る場合は、その違う差額を支払います。
固定残業代制度を導入する流れ
①説明会の開催
②質問を受け付ける(質問受付期間として一週間程度の期間を儲けると良い)
③個別面談(各従業員に改定後の賃金を通知)。
④同意を得る(同意書に署名捺印)
⑤従業員代表選出・就業規則変更についての意見徴収
(過半数労働者で組織される労働組合がある場合にはその代表者)
⑥変更後の就業規則の届出・周知
⑦雇用契約書の交付
(固定残業手当)
第○条 固定残業手当は、法定労働時間を超えた20時間相当分を固定的に支給する。
(時間外労働手当)
第○条 時間外労働手当は、就業時間を超えて勤務することを命じ、かつ固定残業手当の20相当分を超えてその勤務に服した社員に支給する。
2. 時間外手当の額は、法定労働時間を超えてかつ固定残業手当の20相当分を超えて労働させた場合、時間外勤務1時間につき、下記の計算式で得た額とする。
◆基本給/ 1ヶ月平均所定労働時間×1.25×時間外労働時間数(20時間超)